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濡花 ~義理の父親に堕とされていく若妻~
第31章 密会 ~終章~
「あなた……忘れ物ない?……」

「あぁ…大丈夫だよ…」

花怜は戸締まりを確認して玄関に向かった。

「鍵も持ってるよね?……」

そう言いながら鍵を閉める。
夫と二人、キャリーバッグを転がしエレベーターへと歩いていく。

「…ぁ…こんにちは…黒木さん…」

前を歩く夫の声にドキッとした。
エレベーターの前にごみ袋を持った黒木が立っている。

夫の後ろから恥ずかしそうに頬を染めて会釈をした。

「こんにちは…水河さん…もう出発されるんですか…」

エレベーターが到着するまで夫と黒木の立ち話。
花怜は黒木が変な事を言わないか気が気じゃない。

「えぇ…妻と駅前でランチでもしようかと…またしばらく別居ですからね…。黒木さんこそ大掃除でもされたんですか?…」

「いえ…昨日かなり部屋を汚してしまいましてね…妻が帰ってくる前に証拠隠滅ですよ…」

【証拠隠滅って…思わせ振りなこと言わないで……】

花怜は黒木を睨んだ。

孝一は背後の花怜など見えていない。
それでも訳知り顔でニンマリとしている。

【そりゃそうだろ…家族の留守中に浮気してたんだ…ごみ袋の中身は大量の臭いティッシュの山なんだろう?…】

「あ、来ましたね…黒木さんお先にどうぞ…」

「すみません…ありがとうございます…」

一昨日乗り合わせた時と同じ立ち位置になった。
孝一が一階のボタンを押して、エレベーターは降りていく。

花怜は夫の背中を確認して、静かに振り向く。
また尻を触ってやろうと思っていた黒木は驚いた。
花怜が胸板に手を置き背伸びしてくる。

【おいおい…奥さんっ…】

「んっ……」

顔を寄せる花怜がそっと舌を差し出してくる。
黒木も応えるように顎を引いて舌を伸ばした。
静かに…ほんの数秒…舌先で円を描くように絡め合った。

エレベーターが止まると孝一が開のボタンを押して振り向いた。
花怜は黙って夫を見ている。
その後ろで黒木はそっぽを向いていた。

「お先にどうぞ…」

孝一の言葉に黒木は礼を言いながら花怜の横を通り過ぎる。

【ほんとに…二日前とは別人みたいだな…】

それが自分と過ごした濃密な時間のせいだと思うとまた股間が疼いてしまう。
ゴミ捨て場に向かう足を止めてもう一目と振り返った。

「水河さん…お気をつけて…奥さんもまた…」

黒木はそう言ってタクシーに向かう二人に声をかけた。
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