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羊にご用心!?
第1章 ~やっぱり甘めが好き~
勢いよく重みのある二枚扉を開くと、そこにはこの屋敷の主人とアルがいた。
「リリム、何だはしたない。グリッド家の令嬢とあろうものが」
父の言葉を気にもせず、お嬢様は犬コロの執事を睨みつつ部屋に入ってゆく。
────何でニコニコしてるの、人の裸を見たくせに……
お嬢様はそんな葛藤を抱えたまま、丸みをおびたいかにも苦労を知らない伯爵らしい父に喰いかかる。
「お父様、アルを解雇するおつもりですか?」
「ふむ、リリム。彼はだな……執事には」
伯爵はごもごもと奥歯にモノが詰まったような物言いで話す。
執事のアルは、先程までニコニコとしてた表情はシュンっと落ち込むように、眉尻を下げ透きとおったスカイブルーの瞳を歪ませ潤ませていた。
「お言葉ですがお父様。グリッド伯爵の名は伊達ですか? お父様。アルは一層こと芸術品と思いください。執事と思うからダメなんです。もっと、広いお心をお持ちください。アルは、他ではきっと雇っても貰えませんよ?」
「言ってることが支離滅裂だぞ、リリム」
────だって、だって……アルは、どうしようもないほどの天然執事だけど、可愛いんだもん。
それは小動物に寄せる愛情と同じ、犬コロアルはたった一週間で屋敷の使用人及びお嬢様の心を鷲掴みした。
「お嬢様……そんなにワタシのことを」
瞳を潤ませ、その姿は尻尾をふり喜んでいるようにも見えなくなかった。