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鬼の哭く沼
第6章 朔月に濡れる赤

闇夜に降る雨を、暗雨という。

夕餉を終えた頃から降り出した雨は、夜が更けるにつれて勢いを増しているらしい。障子窓の外から聞こえる雨音は大きくなるばかりだ。現世とは気候が異なるのか、普段あまり暑いと感じる事の無い幽世の夏の夜だが湿気だけはどうにもならない。じっとりとした空気に閉口し、顔を顰めて手団扇ではたはたと顔を扇ぐと寝具の用意をしていた風花が気付き扇子を持って近寄ってきた。


「ねね様、おあつい?あおぐ?」

「ううん、大丈夫。ちょっと蒸すなあって思って…ああっ、でもありがとう。自分で扇ぐからその扇子、貰っても良い?」

「あい!」


大丈夫、と答えた途端扇子を手にしょんぼりと肩を落とされ、慌てて礼を言って受け取る。幼い双子に世話を焼かれるとつい気遣いで返してしまうが、それは逆効果なのだと最近学びつつある。上質な香り漂う白檀で細工された扇子の骨木を、指先で弄びながら双子を眺めた。てきぱきと寝具を整え、行灯の火を調整するその姿にはいつも感心してしまう。
この年齢で自分の役割に誇りを持っているとは、なんて出来た子たちだろう。自分が同じ年の頃は、泥だらけで近所を走り回っていたただのお転婆ガキんちょだった。その上、大学生になって一人暮らしをするまでは、実家では殆ど洗濯やら料理やらは母親にまかせっきりだった。…思い出すだに情けない。比較なんて双子に申し訳なくてとてもとても出来ない。


「雨、止まないね…」


僅かに障子窓を開くと、濃く香る雨の匂いと大きくなる雨音。厚い雲に覆われた月は、きっと雨が降っていなくとも見えなかっただろう。
今夜は新月、朔の日だ。太陽の恩恵を間接的にもたらす月すら浮かばない、濃度の高い夜闇の日。こんな日は、陰の気が増える所為で質の悪い妖が跋扈するのだという。だから、朔の日だけは九泉楼も休業する。そう説明してくれた九繰は夕餉を終えた後も珍しく香夜の部屋に長々と居座り、双子の相手をしていてくれた。

(そう言えば、あの後の九繰も様子が変だったな…)

大量のお菓子を抱え部屋へ戻った三人を笑顔で迎えた九繰は、香夜の手の中にあった巾着を見て一瞬、表情を変えた。気の所為だったかと思う程に僅かの間ではあったけれど、氷のように冷たく鋭さを増した視線に背筋が震えたのを憶えている。

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