この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
小綺麗な部屋
第1章 雪崩

 会計を済ませている間、イツキはガラス戸の向こう順番待ちのソファに腰掛け足を揺らしていた。
 まだ昼前どき。
 仕事に向かうにも三時間ほど余裕がある。
 どうしたものかと考えながらレシートを受け取り、イツキが開けてくれたドアを出た。
「ごちそうさまでした、浦田さん」
 礼儀正しくぺこりと下げた頭には撫で回したくなる愛しさがある。
 疼く手を握りしめ、乾いてもない唇を舐める。
「あの」
「おいで」
 無意識に出た一言を置いて、エレベーターに向かった。

 トコトコと素直についてきた少年と鉄の小さな密室のなか、対角線上に向かい合う。
 幼い両手は体の前で絡め、盛りを過ぎた大きな腕は胸元で組まれて。
 上下どちらからか轟く機械音が腹の下に響く。
 乾いた唇を開こうとしたら一階についてしまった。
 間の悪い沈黙を噛み締めつつ、陽光が斜めに刺さる小道に入る。
 まだ暖簾もかかっていない飲み屋街を未成年を連れて歩くなんて初めてだろう。
 高架下の大通りに抜けて、オフィス街へ。
 対向して歩く社会人たちの黒い人影。
 影、陰。
 石を避けて流れる川の水にでもなった気分で練り進む。
 足音が連打し奏でる。
 調子良いテンポを背後の声が崩した。
「浦田……さ、ん。足、速い」
 頑張って無言を貫いていたであろう意地も二つ目の交差点までには折れたらしい。
 コツリと革靴を止めて振り返る。
 腰元に熱い息遣いがぶつかるようだ。
 いかがわしい想像をしてしまった思考を追い出す。
「食後の散歩にと思ったけど、悪かった」
 イツキは何かを飲み下すようにぐっと顎を引いたかと思えば、両拳を振り上げながら突進してきた。
 突然のことにバランスをとってふらついたが、抱きとめてやることに成功する。
 肩を縮め、拳を鎖骨あたりに押し付けてくる様は少女のようだ。
「……置いてく、かと思った」
 ずいぶん幼稚な声だった。
「このまま、おれを置いて、行っちゃうって」
 周りの目が気になり姿勢を正す背筋を無視して、前屈みになり頭を撫でてやる。
「少なくとも送り届けるまでは私が保護者だ。そんなことしないよ」
 言い終えると同時に理性が文句を垂らした。
 ガキとの約束はするものじゃない。
 うるせえ、後の祭りだ。

/12ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ