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―不還―
第8章 暗闇の中…一筋の安寧 2
「おやすみなさい…リヴァイ兵長……」


寝息を立てているリヴァイの傍からゆっくりと離れると、
エレンはそっとドアの方に向かった。

音をなるべく立てないように気を付けて外に出る。
カチャ…パタン……。



「…っ……」

途端気が抜けて、エレンは思わずドアを背に、
ズルズルとその場に座り込んでしまった。

右手で顔を覆う。
顔が…身体がほんのり熱い。
心臓の鼓動がどんどん早くなってくる。


人類最強の人、その強さは自分の憧れでもある。
あの人の弱い一面を見てしまったせいなのか、
それとも身体に触れてしまったせいなのか、
何かしら身近に感じてしまったせいなのか…
理由はハッキリとは解らない。

ただ、エレンは今まで味わった事のない
もどかしいような、心臓の奥が疼くような、
それでいて切なくて苦しいような…

不思議な感覚に感情を揺さぶられてしまっている。
いや、これはもっと以前から心の奥底に
くすぶっていたのかもしれない。

エレンは頭を抱え込んでドアの前でうずくまっていた。
暫くあれこれと考えていたがキリがない…。

…しっかりしろっ、俺…

両手で頬を軽くピシャリとはじくと、
ランプを持って立ち上がり、地下の自室へと歩き始めた。
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