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海鳴り
第7章 満ち潮
土曜日の午後、律子は晴れ渡る秋空を見上げながら買物に出た。

陽射しが暖かく、歩けばぽかぽかと躰が温まってくる。

しばらく歩くと、バタバタと小走りで駆けて行く数名の主婦に追い抜かれた。


「……」


振り返ると、子供に手を引かれた老人や、赤ん坊を抱いた若い母親、男女を問わず次々と海の方へ急いでいる。


何かあったの?


律子はスーパーの前で店のシャッターを下ろし、鍵を掛けている春子を見つけた。


「こんにちは、何かあったんですか?」


春子が振り向いた。


「あぁ、律子先生」

「皆さんどこへ行くんですか?……なんか、凄く急いでいるみたい…あの、もうお店閉めるん…」

「先生っ、先生も行きましょう!」

「えっ、あっ…」


春子が律子の手を引きながら足早に歩き出した。


「船から連絡が入ったんです、久々の大漁ですよ…。
うちの人、昨日から漁に出て、あ、いつもは日帰りなんですけどね、アハハ……心配してたんです……あ、先生、町内放送聞こえなかったんですか?」



大漁?

それがなんなの?



律子は興奮ぎみの春子に引かれ、コケそうになりながらついて行った。




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