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海鳴り
第7章 満ち潮
「ぅおぉーー…」
「ぅわぁーー…」


あちこちで歓声が上がる。

それは戸惑っていた律子の胸に響き、沖の方へと顔を向けさせた。


「………」


陽の光を反射して光る海に、漁船が群れをなしてこちらに向かってくる。


「すげえ…」

「ほんと…」


人々はどよめき、言葉を失った後、再び「わあっ」と歓声を上げた。



ボォーーーーー…



呼応するかの様に船が次々と汽笛を鳴らす。


「っく~、たまんねぇなぁ…」


遠く小さく見えていた船影が徐々に近付き、人々の目にはっきりとその姿を映し出した。


「見ろ!大漁旗だ」

「大漁旗だ!」

「すげえ…」

「勇壮だなぁ」


一隻の船に大小様々、風にたなびくたくさんの大漁旗。

赤や青、緑、白を基調に日の出や宝船、跳ねる魚や波が描かれ、船名や「大漁」の堂々とした文字が勇ましく揺れるそれは、海に生きる漁師たちの心意気を表していた。


あぁ

凄い…


律子は声も出せずに息を呑んだ。


「久しぶりに船団を組んだな…20はある…」

「あぁ、何年ぶりだろう…」


扇状に広がっていた一団が形を変え、港に入る為にゆっくりと列を整える。

青空、波の音、エンジン音、集まってくる海鳥達の鳴き声、人々の歓声…そして大船団…


すべてが海の上にあった。





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