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海鳴り
第7章 満ち潮
「えっ…」

「俺じゃなかったらどうするんだ」

「だって…」

「ちゃん確認しねえと…」

「…ごめんなさい」


出鼻をくじかれてしまった律子は、言い返せずに謝っていた。


「ん…やけに素直だな。…遅くなっちまったからひっぱたかれると思ってたんだけど…」

「そんな事しません」


相沢は俯いた律子の前髪を軽く掻き上げながらその顔を覗き込んだ。


「武を送った後で、独り身の奴らに酒の席に呼ばれて断れなかった」

「そうですか、いいんですべつに」

「遅くなっちまってすまねえ…」


なぜか拗ねたくなる。
さっき叱られたせいかも知れない。

律子は少し下がって相沢を見た。


「べつに構いません。付き合いは大事だし…
私はもう寝るつもりでしたけど」

「……」


相沢は律子の肩に両手を伸ばしぐっと引き寄せて強く抱きしめた。


「…っ…」

「酒は一滴も呑んでねえ」

「………」


「…あんたを抱く事しか考えてなかった」

「…っ…」

「今日だけじゃねえんだ……俺はずっと…ずっとあんたの躰を…」


律子を掻き抱き、激しい欲望を口にする相沢の言葉に息ができない。



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