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海鳴り
第3章 ぬくもり
静かにドアが開き、静かに閉じられた。


「………」


眩しい光が目に入り、律子は思わず瞼を硬く閉じた。


「……大丈夫か…?」


座り込んで動けない律子に相沢が声を掛けた。


「……は、はい…」


ようやく部屋に明かりが戻り、律子は暗闇から解放された。


「………」


中腰になって律子を覗き込む相沢と目が合う。

カッパは用をなさなかったらしく髪も顔もびしょ濡れだった。


「い、今タオルを…」


両手を床について立ち上がろうとする律子がふらついた時、相沢が腕を掴んで支えようとした。


「い、いやっ!」

「あ、すまねぇ…」


律子の怯えた様子に手を離すと、律子は再びぺたんと座り込んだ。


「ご、ごめんなさい私…」

「いや、俺が悪いんだ、そのままじっとしてろ、な?…動くな」


律子は二度頷いて「すみません」と小さく言った。


「もう二度とあんな事はさせねぇ」

「………」

「あいつにはよく言っとく」

「………」

「怖い思いをさせちまって悪かった。
ほんとにすまねぇ」


相沢は深々と頭を下げた。

ポタポタと髪から落ちる滴が床にシミをつくっていく。

律子がようやく口を開いた。


「あの…お刺身、美味しかったです」



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