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海鳴り
第5章 うねり
律子は歩きながら武の音読カードをそっと開いた。
カードからはみ出している下手な花まるは、いかにも相沢らしかった。



なぜこんな人を
好きなんだろう…

好き

好き…



「私…、好き…」


律子はカードをそっと胸に押し当てた。

小さな暗唱隊を追いかけて、他の学年の子供達が集まってくる。


「『天までとどけ、一、二、三』」
  

みんなが軽くジャンプした。

弾けるような笑い声がこだまする。

知らぬ間に大きくなってきた声にはっとして律子は周りを見渡し、振り向いた。


「『もっとたかく、もっとたかく  
と、くじらがおうえんしました』」
  


「まあ…、あなたたち…」


律子の驚きの表情を見て、嬉しくなった子供達は更に盛り上がった。


「『天までとどけっ、一、二、さんっ!』」
  


20人程の子供達が一斉にジャンプする。


「待ってー」
「アタシも入れてー」
「僕もー」
「それ知ってるよ」


「『もっとたかく、もっとたかく』」
  


声はどんどん大きくなり、子供達はどんどん増えた。

顔を見合わせ、笑い合い、声を合わせる。

愉快で楽しい行進は校門へと近づいた。



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