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地獄視
第1章 恋愛下手
判断基準にしてしまう。
そんな私に合う人はこの先現れるのか。
そう思っていた頃に医師の彼から電話があり
仕事終わりに食事でもしようという事になった。
病院へはタクシーで向かう。
この世は地獄へ行く人だらけだ。
文明が発展し便利になるとそうなるのか。
思いながらタクシーの窓から外を見ていると
道に人だかりができていた。
病院の近くだし、と私はタクシーを降りてそこへ
近づいてみた。
ふと見るとビルの屋上で男性が叫んでいた。
下には大勢の人だかりができている。
私はいても立ってもいられなくなりビルへ入っていた。
何故なら彼には死神が憑いていないからだ。
こんな人もいるのか?と思ったら行動していた。
こんなにもったいない事はない。
彼を止める事にした。
彼は叫んでいる。

「俺なんてなんの価値もない人間なんだ。
この先、生きていてもしようがない。
俺にはどうする事もできない。
自分は無能な人間なんだ。
人ひとり助けることすら出来ない。
無に等しい。」


そんなことはないわ。
あなたは素晴らしい純粋な人間のはず。
誰?君は誰だ?
何故俺を止めようとする。
このまま死なせてくれ。
あなたに何があったのか分からない。
でも死ぬことはいつでも出来る。
死ぬだけの勇気があるなら
もっとがんばれるはず。
あんた…何も解っちゃいない。
「あんたもか…」
まぁいい、あんたに付き合ってみるか。
でもこれで最期だ。
おれの名は桐生だ。
あんたは?
慶子よ。
慶子さんか…まだ若いな。
ありきたりな名前だな。
ほっといてよ。
あなたもじゃない。いくつなの?
俺は29だ。
私は26。
私は手を伸ばして彼をこっち側に引き入れた。
私たちはビルから出た。
どうでもいいけどその伸びた髪からなんとかしたら?
これは俺のポリシーなんだよ。
ちょっと後ろ向いて…
切んじゃねーぞ。
分かってるわよ。
慶子は自分の束ねていた髪からヘアゴムをとると
桐生の伸び切った髪を束ねて留めた。
ふ〜ん。なかなか似合うじゃない。
少しはマシになったわよ。
あなたお腹空いてんでしょ。
いくわよ。ランチでも。
しゃーねーな。つきあっか。
あのなぁ…俺甘いのとか食べねーしよ。
そんなこと言わないで何か注文してよね。
あ〜かったるい。だから女ってよ。
何?何か?
いや…うーむ。
…ていうか俺スタバなんて入ったことねーし。
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