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混沌の館
第8章 グラマーな人妻
 久美との別れは、私の心に大きな傷となって残った。

 これまでにも失恋したことは何度かあったが、そんなこと、ずっと昔のことだ。すっかり私の中から免疫は消え去っていた。



 寝ても覚めても久美のことが頭から離れなかった。


 40歳を超えた中年男が失恋してメソメソと涙を流す。そんなことだからお前は女にふられるのだ。自己嫌悪にさいなまれ、気持ちが塞ぎ込んだ。

 仕事が終わり、むさ苦しい男の体臭が漂う寮に帰ると、より一層久美の柔らかい肌と甘美な香りが懐かしく感じられた。


 久美と過ごした時間、そこはそのままぽっかりと空いた時間となり、私はそこを埋める術を見いだせないでいた。



 サイトにログインはするが、以前のように掲示板に書き込みをするでもなくまた、女性の掲示板を覗くこともしなかった。




 私は、ただ何度も何度も久美のプロフィールを眺めていた。




 何日そんな日が続いただろう。そうするうちに、私はあることに気付いた。

 出会い系サイトには、様々な機能が備わっている。


 私が今まで利用していたのは、その一部でしかなかった。

 久美のプロフィールページには、次から次へと男からのメッセージが書き込まれていた。私は、これらをチェックする目的もあって久美のページを見ていたのだが、今まで見向きもしなかった『日記』という機能に注目した。




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