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あの海の果てまでも
第4章 新月の恋人たち 〜新たなる運命の扉〜
『…親愛なる暁へ
すまない。
本当にすまない。
お前の苦しい恋に全く気付いてやれなかった私を許して欲しい。
あんなに近くに居たのに、私はお前の苦しい胸の内を、春馬への想いを、二人の関係を全く気づけなかった。
こんな愚かな兄を許して欲しい。

暁、お前は今回のことで、私が怒り、お前に失望し、軽蔑しているのではないかと思っているのだね。
そんなことは全くないのだよ。
…この胸の内にあるのは、お前が春馬と愛し合っていたことにもっと早く気づいてやれば、こんな悲劇は生まれなかったのではないかと言う苦い後悔だけだ。

暁、
…私は、お前の何を見ていたのだろう。
誰よりも美しく賢く優しく辛抱強いお前…。
お前は私の理想の弟だった。
お前は私の自慢の弟だった。
…もしかして、そんな私の気持ちを裏切るまいと春馬のことを打ち明けられなかったのではないか。
すべての悲劇の始まりは、私が原因なのではないか…と、とても悔やんでいる』

「…違う…兄さん違います…!
兄さんが原因なんかじゃない…!」
暁は必死に手紙に叫ぶ。

「…兄さんのせいなんかじゃない。
僕が…僕が…弱かったからです…!」

…堂々と大紋と愛し合っていると言えなかったのは、彼の立場を慮ったことからだ。
彼の社会的地位や将来を台無しにしたくなかったからだ。
…けれど、その一方で、本当は怖かったのだ。

すべての真実を明らかにして、最愛の兄に嫌われるのが。
軽蔑されるのが。
突き放されるのが。

それは、礼也が原因ではない。
愛されることに臆病で、自らの殻に閉じこもりがちな、自分の心の弱さが最大の原因なのだ。

…兄さんは…そんなひとではないのに。
どんな自分でも丸ごと受け止めてくれる大きな愛を持ったひとなのに。

「貴方の愛を信じ切れなかった、僕の心の弱さのせいなのです…!」

白い頰を濡らす涙を拭いながら、暁は手紙の文字を追い続ける。




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