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メダイユ国物語
第3章 幕間 その一
 見下ろすマレーナは目を伏せたかった。だが彼女に伸し掛かる王女という立場が、目を逸らすことを許さなかった。

 執行人がレバーを操作する。すぐに四メートルほどの高さから、重量百キロにも及ぶ鋼鉄製の刃が落下した。巨大な刃が国王の頸部に食い込み、肉を裂き骨を砕いた。そして台座に固定された人間の首と両手首を、いとも容易く切断した。

 ――ガコンッ

 刃が台座の一番下まで降りてその動きを止めた。それと同時に、おびただしい血飛沫と共に、胴体から離れた頭部と二つの手首が、台座前に置かれた布製の籠に落下した。

 一瞬の出来事だった。

 執行人はもうひとりを呼び、ギロチンの台座両側面に設置されたクランクを二人がかりで回転させた。鎖が巻き取られるごとに、真っ赤に染まったギロチンの刃がゆっくりと上昇する。

 ギロチンの台座中央には、食道や気管、骨に神経に血管がぐちゃぐちゃになった、赤黒い肉の断面があった。その両脇には、ほとんど骨が占めている小さな断面が二つ。いずれからも、ボタボタと血を滴らせている。

 広場に集まった兵士たちの歓声が最高潮に達すると、そのタイミングに合わせ、再び大砲が空砲を放った。オズベリヒと彼らにとっての祝砲だった。

「うぷっ……」

 目を逸らすことなく、一部始終を見届けたマレーナは、込み上げる嘔吐感に思わず口を両手で覆った。

「お……ええ……」

 堪らえきれずに彼女は窓から吐いた。昨夜からろくに食事をしていないため、空っぽの胃から逆流するのは消化液だけだった。すぐにファニータが駆け寄り、王女の背中を擦る。彼女は固く目を瞑り、広場の方へ目を向けることが出来なかった。
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