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メダイユ国物語
第4章 非情な実験
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 使いの者の先導で、マレーナが連れて来られたのは、オズベリヒの私室――元々の応接室ではなく、医療施設として近年になってから城の敷地内に建てられた近代的な建物だった。

「こんなところで何をしているのです?」

 マレーナは従者に訊くが、彼も聞かされていないらしく、明確な答えは得られなかった。

「こちらでお待ちください。オズベリヒ様へお伝えいたします」

 建物内の一室に入ると、従者はそう言い残して部屋を出て行った。

 マレーナは周囲を見回す。この建物には何度か足を踏み入れたことがあったが、この部屋は見たことがない場所だった。細長いその部屋は狭く窮屈で、一方の壁一面にだけ窓が広がっている。その窓の向こうは比較的広い部屋になっていた。隣のその部屋には何に使うのかよく分からない精密機械が設置され、壁際の棚には実験器具や薬品の瓶などが多数収まっていた。その大きな部屋は照明が全て点灯されておらず、かなり薄暗かった。

 しばらく待っていると、背後の扉が開き、二人の従者を従えたオズベリヒがやってきた。

「お待たせいたしました。ようこそいらっしゃいました」

 うやうやしく頭を下げるオズベリヒは、これまでと違い白衣を身に着けている。一瞬、別人かとマレーナは思った。

「ここは何なのです? わたしはただお話を伺いたいだけです」

「申し訳ございません。手が離せませんので、こちらに来ていただくことになりました」

「ここで何をしているのですか?」

 怪訝な表情を向け、マレーナが訊くと、

「大事な実験です。姫君にもご覧いただこうと、準備していました」

 白衣姿のオズベリヒは答える。マレーナにとってはどうでもいい回答だった。

「実験? いえ、わたしはあなたに尋ねたいことがあるだけです。実は――」

 マレーナは苛立ちを抑えながら、問い掛けようとした。だが、彼はそれを遮るように言葉を重ねる。

「まあまあ。見ていただければ、姫君の知りたいことの答えが得られるかも知れませんよ?」

 オズベリヒはニヤニヤと薄笑いを浮かべる。

(何を言っているの? わたしが知りたいのはそんなことじゃない)

 そう言いかけるが、彼は更に続ける。

「ひとまず落ち着いて、こちらにお座りください」

 言いながら、彼は傍らのベンチをマレーナに薦めた。
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