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それぞれの後編
第20章 サディスティック・マリッジ【あとがきのあと】
ドキンドキンドキン…心臓が忙しい。 

先程の琉の睨むような視線を浴びてから、愛里咲の心臓はこれ以上ない程に早鐘を打つ。

更衣室へと逃げ込み、この騒動の原因ともいうべきそれをロッカーから引き摺り出した。


根岸と愛里咲に宛てられた2つの包み。1つを根岸が持ち去った後、このままデスク上に置いておく訳にはいかないと思い立ち、琉が出社する前にロッカーに隠した。

そのまま一晩。当たり前だが、変わらずにロッカーの中にある。


琉に副社長からの仕事の内容を問われても、今のところ順調だと、手伝いはいらないと誤魔化し続けた。

同じ職場の同じ部署。だけど、琉と愛里咲は同じ仕事をしている訳ではない。

ルーキーの琉とは違い、愛里咲に任せてもらえる仕事は少ないが、それでも仕事だと言い張れば、琉もそれ以上は口を挟んでこない。


(でも…っ…どうしよう…)

このまま隠し切れる自信もない。

この漆黒の包みをどうにかしなければ、間違いなく近い内に琉にバレる。


愛里咲がその存在を一番知られたくない琉がいる家には絶対に持ち帰れない。

(じゃあ……誰かに預ける?でもそんなことしたら私の人格が疑われる!)

こういう類のものをプレゼントされて喜ぶ知り合いが浮かばない。


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