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キラーアイドル 特別編
第1章 逃亡犯
この物語は、実話を基に、一部改変したフィクションとして描かれています。
 なお、登場する地名、団体名、個人名などは架空のものであり事実とは一切関係ありません。
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わたしは視線を向けられるのがもっとも嫌いなアイドル。そう……。なりたくてなったわけではありません。
わたしはネグレストの親に育てられた。そのため、わたしもネグレストだった。

みなさんぁー……今日はわたしのコンサートに来てくれて、ありがとう!🎵

こんなわたしでも……アイドルをしている。
どうして今わたしがこんな大舞台で、人から与えられた楽曲を、ファンの前で【笑顔】で、必死に、汗をかいて、一生懸命に歌えているのか。いつもわたし自身の中で……葛藤して。
毎日が自分との闘いである。
いつかは、バレてしまうのか……ネグレストのわたしを。

不安で仕方ない。わたしなんて、アイドルには向いていない。けして……。
幕が閉じて、わたしは控え室に戻る最中、アンコールの声が響いている。わたしの顔から【笑顔】が消える。
ああ……面倒くさい。またあんな大勢の大衆の前に出ていかないといけないのかと思うと気持ちがすくんでしまう。足がすくむというよりも、気持ちが先にすくんでしまう。言葉の意味として正しいかどうかなど、わたしにはどうでもいい。

わたしはなぜ、アイドルをやっているのだろう。
水を飲み、タオルで汗を拭うと自分を奮い立たせるように、気持ちを引き締めるために、1分間深呼吸しながら静かに目を閉じる。気持ちを落ち着かせる。
煩悩を取り払うかのように頭の中を空っぽにする。
ふぅ……ふぅ……ふぅ……。目を閉じながら頭の中で意識を一点に集中させる。そんなことは、いつものこと。
だいぶ落ち着いてきた……。そろそろ行けるかな?大丈夫かな?わたし自身の気持ちを落ち着かせる方法は、学生時代に身に付けたもの。自分で考案したものなので、これが正しい方法かどうかは分かりません。心理カウンセラーに相談したわけではありませんから。

それよりも前に、毎日家の玄関から一歩外に出ることに躊躇する。そんなときは、わたしはD.カーネギーの言葉を思い出します。
一歩、一歩踏み出せ……成功への近道。その勇気をわたしにください。わたしは顔を覆っているタオルを取り、椅子から立ち上がり、そのドアを出る。
わたしの母は施設に入っています。
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