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淫魔の宿へようこそ
第3章 ホテルのお仕事
「いえ? 悪魔ならちょっとは分かりますけど。 ただ、どおりでドルードさんって外見の割には妙に……大人っぽい? ですよね」
すっと伸ばした彼の腕を伝い、エビルは絵画の枠に、はっしと掴まって再び額縁を磨き始めました。
そんな様子を二人は並んで眺めています。
「ははっ…感想がそれ? ニコルはやっぱり面白いね」
褒められたのかどうかも分からない彼の言葉に、ニコルは自分の頬が熱くなったのを感じました。
悪魔というからには何か悪いものということぐらいは理解出来ます。
ですがそんなニコルの目の前でエビルを構いながら苦笑しているドルードは、
まだ幼さを感じる容姿といい、
冷静で気遣いな性格といい、
最初お腹が空いて倒れていたことといい。
どちらかというとちょっと間抜けっぽい天使に近いのに……そうニコルは思ってしまったぐらいです。
強面なのに無口で働き者だというエビル達も、よくよく見ていればどこかユーモラスな生き物に思えてきます。
そういえば、昨日の鏡の中の彼。
あれは今のドルードと全く同じ外見だったのを思い出しました。
「お歳がいくつか知りませんが、心強い人と一緒に仕事が出来て光栄です。 ドルードさんも話していただいてありがとうございます」
というわけで、あまり深く考えないことにしたニコルが食糧庫をチェックしに行こうと立ち上がり、その際に
「……千歳ほどかな」
ポツリと呟いたドルードの言葉をつい聞き逃してしまったのでした。

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