この作品は18歳未満閲覧禁止です
後宮に蝶は舞いて~Everlasting love~第二部
第10章 再び春巡りて
雪鈴は弾かれたように面を上げた。漆黒のコンの瞳が射貫くように見つめている。まるで彼の瞳に囚われたかのように、雪鈴は眼が離せなかった。
「俺の父は今の国王殿下と親戚とは名ばかりだ。ましてや、その倅たる俺ときたら、王族を名乗るのもおこがましい。それでも、身分だけは高貴で、任官もできず、暇を持て余すだけの日々だ。しかも、体面を保つための支度金すら、ままならず内証は常に火の車、単なる貧乏王族だ」