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第10章 再び春巡りて

　少し遠くから眺めているだけでは満足できず、そっと気配を消して乙女に忍び寄ります。
　彼は乙女が畳んでおいた外衣と紗を奪い、隠しました。ほどなくして乙女が髪を洗い終え、外衣と紗を探しているのが判り、彼は漸く彼女の前に姿を現したのです。
ー何か、お探しですか？
　乙女は泣きそうになりながら、懇願しました。
ー大切なものを無くてしまいました。それらが無いと、天には還れません。あなたは、この近くで外衣と紗を見かけませんでしたか？