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第12章 tarte

「あのぉ……」

そのとき、近くのテーブルのお客さんに呼び止められた。

「あの……さっきの人って、この人ですか？」

ケータイ画面の中には、笑顔の俊太の写真と、《最年少受賞記録を塗り替えた、若き天才パティシエ》という見出し、才能と容姿を誉めちぎる記事が書かれていた。
俊太はそのコンクールで、オーナーが初めてとったものと同じ、最優秀賞を受賞していたのだ。

……すごい！すごいね！俊太。感激で鼻がつんとした。


そして、みんなに見送られて、感謝で胸を熱くさせながらお店をあとにした。

高まる鼓動の音が、全身で響く。

会いたくて、会えなくて、やっと会えた、今でも大好きな人。
もう少しで会える……。


色とりどりのフルーツが乗ったタルトみたいに、
この世界は、こんなにも彩りに満ちている。