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第1章 financier

グラスのステムに指先を滑らせ、
優しく握って白い液体を舐めると、
ラムが舌先を痺れさせた。

その痺れは、次第に全身へ廻っていく。
 
「欲しくなったのはこれだけ？」

男の声が熱を帯び、

「……これだけじゃ、いやです……」

莉乃が答えると、
バーテンダーは手をとめて、もう聞き耳を立てていることに自分でも気づいていないようだった。