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ママ活
第3章 快楽かお手当かママか──case.3亜純──
 
 明咲の恩人で、彼女を脅迫してもいるのが佐和子と知った翌週、亜純は彼女と日没した街へ出た。

 この時間帯は平日でも、街全体が心なしが浮かれている。どこから流れてきてどこへ流れてゆくのか見当つかない人の群れに紛れた二人も、他人の目には、いくらか煩わしい雑踏の一部と映っているに違いない。

 ただし、亜純の連れほど、自身の野性を解放している女は稀少だろう。週末に知り合った高校生ほどではないにしても、明咲の過剰装飾趣味が、辛うじて彼女を健全な景観に馴染ませている。


 先週とは一変して、穏やかな気候だ。

 通行人の大多数が軽装で、仕事上がりのスーツと本人の基準で言うところの普段着である亜純と明咲は、間違った格好をしていない。間違った格好をしていないのに、さっきから彼女は後ろ暗いものでも隠している具合にそわそわしている。


「良い眺め」


 信号に引っかかった時、亜純は明咲のある一点を見下ろした。

 こうして彼女を見下ろすために、今朝から履いてきたヒール。実際の背丈がほぼ変わらず、日頃は外で見下ろす機会もない彼女を小さく感じられることを想像すれば、昼間、亜純は上司のきわどい言葉も聞き流せた。
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