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シュガーヒル
第6章 ティファニー

何よりも、私の乾ききった心と身体を十分に満たしてくれていた。
それが、何よりも嬉しかったのだ。

私は、少しずつではあるけれど、自分に自信を持てるようになっていった。
ヤマザキと会うまでは、自分はもうオバサンで女としての人生は終わったものだと思っていたのだ。

そんな私を見て、ヤマザキは綺麗だと賞賛し、笑顔をくれたのだ。
人間とは、賞賛されるととても嬉しいものだ。

「ありがとう」と言われる事、「笑顔」を向けられること、そして「賞賛」して褒めて貰えること。
この3つを与えられると人間はとても元気になってゆく様な気がする。

ヤマザキはこの3つを私に与えてくれたような気がするのだ。
この日、私は38回目の誕生日を迎えたのだけれど、ここ数年で一番嬉しい誕生日だった。

ランチの帰り、私はヤマザキからちょっと散歩して行かないか。
と、誘われていた。

だが、この時からちょっと私の精神はおかしくなり始めていた。
漠然とした「不安」に襲われたのだ。

理由は自分でも分からなかった。
ただ、ヤマザキと買い物をしてランチをした帰りに、漠然とした不安に襲われたのだ。

「ヒロくん、ごめんね。私、何だか気分が悪いからもう帰るわ…」
「美都、大丈夫かい?送って行こうか?」

「大丈夫よ、ひとりで帰れるわ…」
「気を付けて帰るんだよ…」

そう言われて大きな交差点で別れたのを覚えている。
蝉の声がやけに騒がしかった。

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