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君とメメント・モリ
第22章 終章
凛の瞳に、涙の薄膜が張っている。

病室の照明を受けて、小さな湖面のように瞳の光を揺らしながら、凛は、じっと天井を見据えていた。

唇は今も可憐な桜色だが、以前のようなふくらみはなく、表面の皮膚は乾いて立て皺が目立ち、ところどころひび割れている。

頬の肉も削げ落ち、ちりめん皺の薄い皮膚が肌が骨の上に一枚かぶさっているだけだ。

髪は白く、耳の上までの長さで切りそろえられている。毎朝櫛で整えてもらってはいるが、洗うのは週に一度がいいところだ。


「おはよう」

スーツ姿の男が、病室の白いベッドに横たわる凛に近づき、白い枯れ枝に似た手を取って両手に包む。凛は目を丸くしてから、眉をひそめた。
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