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きのうの夜は
第8章 八丁の湯
吉村との関係に複雑な思いを感じながらも彼と離れられないまま気づけば1年が経っていた。

私は32歳の誕生日を迎えていた。
この年の夏季休暇も吉村と一緒に9月に取ったと思う。

この年、吉村は私にこう言ってきた。

「俺、今年の夏季休暇さ、日光に行ったことないから行ってみたいんだよな…」
「日光?」

「そうだよ、日光だよ…」
「日光にある温泉に行きたいの?」

「あぁ、鬼怒川温泉のその奥にある温泉に行ってみたいんだ…」

そんな経緯があり、鬼怒川温泉のその奥にある夫婦渕温泉のそのまた奥にある八丁の湯と加仁湯と日光沢温泉を巡る事になった。

温泉旅行に行く当日、お天気はとても良くまだ残暑を厳しく感じた。
確かまだ9月に入ってから直ぐの時だったと思う。

私たちは北千住まで出て、そこから鬼怒川温泉へと向かった。
鬼怒川温泉から栗山村営バスに揺られる事110分、夫婦渕温泉に着いた。

夫婦渕温泉もかなり鬼怒川から奥に入った温泉だ。
それに、かなり有名な温泉でもある。

そこからは八丁の湯から出ている送迎バスに揺られて30分ほどで宿に着いた。
奥鬼怒温泉郷の中の一軒宿の温泉「八丁の湯」。

バス停のある女夫渕温泉から送迎もあるのだが、奥鬼怒歩道を鬼怒川の源流沿いに1時間半程度歩いて訪ねるのも旅情をかきたてられる。

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