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きのうの夜は
第10章 距離感

その当時、私は派遣社員で働いていて、毎月のお給料は手取りで25万円程だった。
毎月ちゃんと貯金も出来ていたし、食うに困る様な生活はしていなかった。

吉村と一緒に行った旅行の旅費も自分で出していた。
「金が無いだろう」と言われる筋合いはなかったのだ。

私は、吉村にこう言った。

「今度は、お金で私を縛るの?」

それを聞くと吉村は困惑する。

「そ、そんなつもりじゃない…」

十分に金で縛ろうとしているのは明らかだった。
私は、半ば強引に100万入った通帳とキャッシュカードを渡されてしまった。

だが、私はこの100万を使う事はしなかった。
使えば益々、吉村の束縛は激しくなるだろう。

そう、感じていたからだった。
私は、吉村と距離を置くことに決めた。

毎週末通っていた吉村のマンションにも行く事をやめ、私のアパートにも来ることを断ったのだ。
私のこの処置で、吉村はかなり悩んでいる様だった。

しかし、私の気持ちはもう冷めてしまっている。
別れるのも時間の問題の様に見えた。

この頃だった。
私は、同じグループである後輩が気になるようになったのだ。

その後輩は私よりも3歳年下の29歳の男だった。
その男は吉村の直属の部下だったのだ。

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