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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第6章 伍の巻
「―」
 公子は言葉を失った。この詩は何も難しいことを考えて作ったわけではない。気慰みに、ふと心に浮かんだ言葉を適当に繋げ合わせて作っただけにすぎない。
 その詩が、公之の気に障ったのだろうか。
 公之がフッと笑った。どこ自嘲めいた笑みを刻む男に公子は胸騒ぎを感じる。
 月明かりに照らし出された公之の顔が、公子には見知らぬ別の男のように見えた。
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