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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第6章 伍の巻
―おいで、おいで。ここに来れば、もう誰に心を乱されることもない。男に欲まみれの眼で見られることもないし、そんなことで辛い想いをすることもないのだよ。
 あれは誰の呼び声だろうか。
 公子がその呼び声に唆され、いざなわれるようにして川べりにいっそう近付いたその時―。
 ふいに脚許にポトリと何かが落ちてきた。
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