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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第6章 伍の巻
あの日、公子は初めて帝の寝所に召されたのだと聞いた。好色で知られる帝の手から逃れた公子は無惨な姿で打ちひしがれ、泣いていた。まるで見捨てられた子猫のような眼で心細さに震えながら、公之を不安げに見上げていた。
恐らく、あの瞬間から、自分は公子に惹かれたのだ。公子を助けたいという想いもむろんあったけれど、その中には、たとえ帝から奪うことになっても、公子を攫い自分のものにしたいという欲求もなかったとはいえない。