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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第6章 伍の巻
「おいおい、そんなに暴れるなって」
右眼の下に泣きぼくろのある男がにやついた顔で言う。
二人の男に組み敷かれた公子は、涙が止まらなかった。渾身の力を振り絞って抵抗を試みても、いかにせん、両手は縛られ両脚は弟の方にしっかりと押さえつけられていては到底身じろぎもできない。
「兄貴、こいつァ、男が初めてじゃないのか」
兄貴と呼ばれる男は、相棒を里丸と呼んでいる。恐らく兄の方がよく名を知られる鬼丸なのだろう。