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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第6章 伍の巻
 里丸もまた匕首を抜く。
 漸く差し込み始めた朝の光に、里丸の抜いた刃が鈍い光を放った。
「色男ぶったことを後悔するなよ」
 そのひと言を合図とするかのように、里丸が獣のような咆哮を上げて走ってゆく。
 だが、一瞬の後、何とも凄まじい断末魔の叫び声が辺り中に響き渡った。
 固唾を呑んでなりゆきを見守っていた公子は、頬を引きつらせた。
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