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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第6章 伍の巻
 鬼丸が傍らの公子の身体を乱暴に引っ張った。地面に転がされたままの公子を片腕に抱え、その白い喉に匕首の切っ先を当てる。
「女の生命が惜しければ、まず刀を捨てろ」
 鬼丸が不敵な笑みを見せる。
 公之は感情の読み取れぬ瞳で鬼丸を見、ついで公子を見た。公子は涙の滲んだ眼で首を振る。
―公之さま、私のことはもう良いのです。私のために、あなたさまがお生命を無駄になさる必要はございません。
 そう伝えたつもりだった。
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