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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第6章 伍の巻
 京の町は碁盤の目のように整然とひろがっているが、右京と左京の二つの町の中、右京は人家も少なく、昼間でも人通りが少なく寂れている。対する左京は町家だけではなく、貴族の屋敷も居並び、商売人たちの呼び声もかしましく、賑やかだ。人通りも多い。
「姫、もう二度と私の傍からいなくならないと約束してくれないか」
 公子の髪についた砂粒を手でそっと払ってやりながら、公之が言った。
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