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幻影の胡蝶 〜桃源郷の寵妃達〜
第3章 四神の最高位【玄武】
「朱雀はね…1番【胡蝶】に心を惹かれていたんだ。
仮初の恋人では無くて、本当の恋人になりたいと思うほど…。」






『仮初』…その言葉に胡蝶はピンときた。

『心に秘めた人が居れば、朱雀はその姿で現れる。』






胡蝶の前では、どんなに彼女を愛していても、自分を見てもらう事は出来なかった。

いつも朱雀は【胡蝶】の最愛の人の変わりだった。






「だから、朱雀がちょっと意地悪しちゃったなら、許してあげて。
きっとまた【胡蝶】が自分を見てくれない事に拗ねちゃったんだよ。」






しょうがない弟を庇う様に玄武は朱雀に言った。

あれは拗ねているとか可愛いものでは無かった。

納得は出来ないが、朱雀のことを考えたら少し彼が不憫に思えた。






「後……これは本当に助言として言うけど……。」

玄武は立ち上がると、胡蝶に手を差し出した。

胡蝶は玄武の手を取って、同じ様に立ち上がる。






「蘇りは諦めて、朱雀と仲直りして、転生するのが1番いい。」

玄武の言葉に胡蝶は目を歪めた。






「未練のある男を愛して、その未練を断ち切る為に朱雀が居るんだ。
彼は本当に女人の気持ちを大切にする男だから、きっと胡蝶の未練は朱雀が満たしてくれるよ。」






玄武はそう言うと、胡蝶に背を向けて歩き出した。






分かっている。

ここは非業の死を迎えた女人が、一時だけ身を寄せる桃源郷だ。






きっと玄武が言う通り、あの人への未練を捨てて、来世に転生する事が1番幸せなのだろう。






胡蝶はギュッと拳を握った。

昨夜見た朱雀の視線を思い返す。






素直にあの目線に縋り付けば、彼は少しの愛をくれるだろうか。

そしてその愛に自分は満足するだろうか。






答えの分からない気持ちに支配される様だった。




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