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天狐あやかし秘譚
第88章 昼想夜夢(ちゅうそうやむ)
ーごめんなさい・・・帰ったら、無事に帰れたら・・・返事をしようって思っていたのに!
こんなことなら、あの時、きちんと私の気持ちを、あなたに伝えておけばよかった、そう思っても後の祭りである。鬼たちの包囲網はミスリルの1メートルほど先まで迫っていた。もう、彼らが本気で手を伸ばせば触れてしまいそうな位の距離だった。
ーも・・・もうダメ!!
百戦錬磨の実力を持つ魔術師ミスリルも、ここに来て恐怖には勝てなかった。とうとうぎゅっと目をつぶってしまう。背中に土壁を感じ、これ以上、後ろに下がることができないことを悟る。
ー助けてっ!
目を瞑って祈る。祈る先は・・・まぶたに映るあの人だった。
『ガジョー!!!』
彼女は叫ぶように愛おしい人の名を呼んだ。それは詮方のないことのはず・・・だった・・・が・・・
『ぐあぁ!!』
『ぎゃっ!』
『うわああっ!!』
鬼たちの悲鳴が聞こえる。そして、いつまでたっても自分に鬼の爪が届くことはなかった。
「ミスリル!!」
声がした。聞き間違うはずのない声。もう、二度と聞くことはないと覚悟した声・・・
まさか・・・
ゆっくりとミスリルは目を開いた。途端、まばゆい月の光が、その瞳に飛び込んできた。天井が・・・地底の闇を形作っていた天井が、抜けているっ!?
そして、金の柄、銀糸をまとった美しい刀身を持つ愛剣ールミナリオーを掲げ、その月明かりに照らされて立っていたのは・・・
「無事か?ミスリル!?」
それこそ、ミスリルを愛した、ミスリルが愛した王国最強の騎士・・・
「ガジョー・・・」
その姿は、瞬く間にミスリルの目から溢れる涙で滲んでいく。安心した彼女が気を失い、ふらりと倒れそうになる瞬間、ガジョーはその力強い腕で、彼女を掻き抱くのであった。
◯ー◯ー◯ー◯ー◯ー◯ー◯ー◯ー◯ー◯ー◯ー◯ー◯
こんなことなら、あの時、きちんと私の気持ちを、あなたに伝えておけばよかった、そう思っても後の祭りである。鬼たちの包囲網はミスリルの1メートルほど先まで迫っていた。もう、彼らが本気で手を伸ばせば触れてしまいそうな位の距離だった。
ーも・・・もうダメ!!
百戦錬磨の実力を持つ魔術師ミスリルも、ここに来て恐怖には勝てなかった。とうとうぎゅっと目をつぶってしまう。背中に土壁を感じ、これ以上、後ろに下がることができないことを悟る。
ー助けてっ!
目を瞑って祈る。祈る先は・・・まぶたに映るあの人だった。
『ガジョー!!!』
彼女は叫ぶように愛おしい人の名を呼んだ。それは詮方のないことのはず・・・だった・・・が・・・
『ぐあぁ!!』
『ぎゃっ!』
『うわああっ!!』
鬼たちの悲鳴が聞こえる。そして、いつまでたっても自分に鬼の爪が届くことはなかった。
「ミスリル!!」
声がした。聞き間違うはずのない声。もう、二度と聞くことはないと覚悟した声・・・
まさか・・・
ゆっくりとミスリルは目を開いた。途端、まばゆい月の光が、その瞳に飛び込んできた。天井が・・・地底の闇を形作っていた天井が、抜けているっ!?
そして、金の柄、銀糸をまとった美しい刀身を持つ愛剣ールミナリオーを掲げ、その月明かりに照らされて立っていたのは・・・
「無事か?ミスリル!?」
それこそ、ミスリルを愛した、ミスリルが愛した王国最強の騎士・・・
「ガジョー・・・」
その姿は、瞬く間にミスリルの目から溢れる涙で滲んでいく。安心した彼女が気を失い、ふらりと倒れそうになる瞬間、ガジョーはその力強い腕で、彼女を掻き抱くのであった。
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