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天狐あやかし秘譚
第90章 末路窮途(まつろきゅうと)
木元と女は変なところで気があったようで、よく共謀して詐欺を働いていた。まあ、どちらかと言うと、木元が女のヒモのような状態だったのだけど、最初の数年間はそこそこいい関係を築いていたようではあった。

ただ、もともと木元という男は、定職にすらついたことがないような人間だ。その性格もたかが知れている。最初の頃こそ優しいところもあったが、次第に女に辛く当たるようになり、詐欺で巻き上げた金も酒と博打に消えていくようになった。

もちろん、俺もただでは済まなかった。酔っ払って帰ってきた『父』は、『母』を蹴り飛ばす。その横で膝を抱えてその様子を無言で見上げる俺の目が気に入らないと、何発も何発も拳で殴ってきた。

俺は、何も言わなかった。いや、言えなかった。
今から思えば、心が凍りついたみたいになっていたんだ。
まるで、自分のことを少し上空から見下ろしているみたいで、殴られているのは『自分じゃない』なんて思ってすらいた。

幼いながら、自分の心を守るための心の不思議な機能だったのだと思う。

ある日とうとう、女は男の元を逃げ出すことにした。もちろん、『子ども』である俺のためではなく、自分のためだ。俺はこの時8歳くらいだったと思う。この女についていく必要はないとは思っていたが、それでも他に頼るところがない以上、仕方がなかった。俺は、女の後ろをついて行った。

女は特に当てがあったわけではないようだった。俺を積極的に守ろうとはしなかったけれども追い払おうともしなかった。幾ばくかの金は持っていたらしく、何かしらの食べ物は食べることができた。

こうして1週間ほど逃げ続けただろうか、ある日の夜、俺と『母』は数人の男たちに取り囲まれて拉致されてしまった。

『何!あなたたち!』
突然襲われ、ワンボックスカーに押し込まれ、ぐるぐると市内を走り回った挙げ句、どこともわからない山の麓にある廃工場めいたところに連れて行かれた。

どんと『母』が突き飛ばされ、廃材がゴロゴロしている床に転がされる。俺達をさらった男は3人、しかし、そこには更に10人近い男がいた。

どいつもこいつもみすぼらしいなりをしていた。無精髭、ボロボロの服、壊れかけた靴を履いているものもいた。しかし、共通点があった。

憎しみのこもった目。『母』を見る、怨嗟に満ちた瞳だった。
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