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Lの劣情
第1章 2024年6月吉日
 28

 わたし達は、お互いの熱い想いを心に秘め、無言で唇を交わし合い、ベッドの上で抱き合いながらカラダを密着していく。

「あ……ふ…うぅ………」

 その柔らい女同士の肌の密着感がまた気持ちよく、いや、心地よく…

 ズキズキズキズキ…
 ウズウズウズウズ…
 ドキドキドキドキ…
 と、また、再び、奥深くが疼き、心が昂ぶり騒めき、感じ始めてきてしまう。

 そしてわたしは…

 ああ、また再び抱かれたい…
 と、心の中で思い始めてきていた。

 …のだが、どうやらアイ先輩には…
「あ、ごめん…」

「え?」

「今日、練習があって……」
 と、スッと唇を離しながら言ってきたのだ。

「あ、う、うん、はい」
 わたしはがっかりした思いを悟られない様に、精一杯、明るく返事を…
 したつもりで返す。

「うーん…とぉ」
 そしてアイ先輩もおそらくはまた再び昂ぶってきている自分の思いに、精一杯の心の想いを込めてなのだろうか…
 そう自分を鼓舞する様な声を漏らしながらハダカの上半身を起こしていく。

「ふぅぅ…」
 そしてため息、いや、吐息を吐き…
 やはりハダカのわたしを上から見つめ、スーと長い人差し指で…
 わたしのお腹にある大きな手術痕を撫でてきた。

 そうわたしは約5年前に大腸ガンを罹患して手術をし、そして3年前にはその大腸ガンからの転移性の肝臓ガンを罹患して、また再び手術をしたのだ…
 そしてその二つの大きな手術によりお腹には、おヘソをはさんだほぼ十字型の手術痕が、薄くはなってはいるのだが残っているのである。

 それをアイ先輩は人差し指先で撫でてきた…

「あ……え、うん……」
 そしてその手術痕の話しをしようと口を開くと、その人差し指を離し、今度はわたしの唇に当ててきて…

「いいのよ…
 うん…今度、また後で訊きたいわ…」
 そう囁いてきたのだ。

「あ……は、はい……」

 そしてそれは暗に、いや、いわずもがな…
 また、近い内に再会を…

 いや…

 逢瀬をする…
 
 と、いう意味でもあるのだ。



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