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心の中のガラスは砕けて散った
第8章 綾乃と綾

ーー
いつも通りの懐かしい部屋の匂い
仏前に線香を灯し 手を合わせリビングへ
まだ 以前の様な笑顔は見えないが
元気そうな姿を見て 少しの安堵を覚え
母の入れて呉れたお茶を一口含んだ時
ポツリと母親の言葉が 耳に入って来た
・・・ 音が消えたの ・・・
飲みかけた 湯呑をテーブルに置いて母を見る
両の手で湯呑を持ち 俯いた母親が呟く様に言った
「 お父さん・・・ 居なくなったら
音も無くなるのね 」
寂しそうな表情で リビングに視線を這わせ
「 起きて 此処へ来る足音
朝ごはん食べ終わって お茶を飲みながら
毎朝 新聞を捲る音も 」
「 あの人が 食事する時 出す音も
お部屋で寝る時 隣で聞こえていた
鼾も無くなって 」
「 お父さん・・・死んだんだなと
その度思うの 」
綾乃は部屋の中 視線を這わせ頷いた
静かなリビング、窓を締めれば外からの音が消える
自宅で 夫を子供を送り出した後、
部屋の中は、一度に静かに その静寂は夕方まで
夕方には、子供の声と、夫が帰り夕餉の騒めき
何時も音に囲まれ 当たり前に思っていた事が
違う事を母は 教えて呉れた
その後 毎週母に電話を入れ、3か月に一度
様子を見に訪ねた
ーー
「 分かった 子供達見ておくから
義母さんに宜しく 」
康二は テーブルのグラスを持ち上げ
傾けながら言った
いつも通りの懐かしい部屋の匂い
仏前に線香を灯し 手を合わせリビングへ
まだ 以前の様な笑顔は見えないが
元気そうな姿を見て 少しの安堵を覚え
母の入れて呉れたお茶を一口含んだ時
ポツリと母親の言葉が 耳に入って来た
・・・ 音が消えたの ・・・
飲みかけた 湯呑をテーブルに置いて母を見る
両の手で湯呑を持ち 俯いた母親が呟く様に言った
「 お父さん・・・ 居なくなったら
音も無くなるのね 」
寂しそうな表情で リビングに視線を這わせ
「 起きて 此処へ来る足音
朝ごはん食べ終わって お茶を飲みながら
毎朝 新聞を捲る音も 」
「 あの人が 食事する時 出す音も
お部屋で寝る時 隣で聞こえていた
鼾も無くなって 」
「 お父さん・・・死んだんだなと
その度思うの 」
綾乃は部屋の中 視線を這わせ頷いた
静かなリビング、窓を締めれば外からの音が消える
自宅で 夫を子供を送り出した後、
部屋の中は、一度に静かに その静寂は夕方まで
夕方には、子供の声と、夫が帰り夕餉の騒めき
何時も音に囲まれ 当たり前に思っていた事が
違う事を母は 教えて呉れた
その後 毎週母に電話を入れ、3か月に一度
様子を見に訪ねた
ーー
「 分かった 子供達見ておくから
義母さんに宜しく 」
康二は テーブルのグラスを持ち上げ
傾けながら言った

