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こんなに晴れた素敵な日には先輩の首を絞めたい
第4章 第3話 かわいい後輩
「おはようございます、日比谷先生」
「なっ……あなたは……」

 垢抜けないユニクロの普段着に身を包み、私にスマホのカメラを向けていたのは私の顔見知りだった。


「いきなりごめんね。ほら、これが証拠写真だ」
「やっ、やめてください! 一体何のつもりですか嶋田先生。人の写真を勝手に撮らないでください!!」
「そんなこと言っちゃっていいのかなあ? これ以上は騒ぎになるから撮らないけど、研修医はバイト禁止だって知ってるよね?」

 今この瞬間に目の前の太った男を叩きのめしてスマホを壊したいと思った。だけどそうなれば警察を呼ばれて|大事《おおごと》になる。

 金曜日の夕方の今、周囲の雑踏には人の目が沢山ある以上ここで喧嘩腰で会話を続けること自体が私にとってもリスクになる。


「分かりました、分かりましたからこれ以上ここで話すのはよしましょう。先生だって私に悪意はないでしょう?」
「もちろんないよ、日比谷先生は僕のかわいい後輩だからね。あと、前にも言ったけど僕のことは先輩って呼んでくれないかな」

 私に自分のことを「先輩」と呼ぶように命じた彼の名前は|嶋田《しまだ》|興大《こうだい》といって、畿内医大病院で働く2年目研修医だった。

 つまりは坂本先生の同期で、私より4歳上で出身大学は病院と同じ畿内医科薬科大学であるということも私は知っていた。


 そんな彼がなぜパパ活をしている私を見つけて、今ここで私に何かを要求しようとしているのか。

 平和な夕方の雑踏で殺気を立てながら、私はこの肥満体の男がこれから私に何を言うのかに全神経を尖らせていた。
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