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銀狼
第7章 還るべき地


此の地は美しい──


「だが…、此処は私が還る場ではない」


「……え?」


「私が天から任されたのは此処ではない…」


銀狼は後ろに振り返った。

二人がいる場所からは彼等…狼の聖地が見下ろせ、さらにそこから分厚い絶壁を挟んだ向こうには森も見える。

ラインハルトの森だ。

遥か遠くにセレナの住む街もあった。


「木々が焼かれ、水は穢れ、獣達は逃げ出す──。…あの森こそが、私の治むべき地か」


銀狼は皮肉をこめ笑みを浮かべる。

腕の中のセレナはそんな彼の横顔を黙って見上げた。




「──…ふっ、…嘆かわしいことだな」



「──…」




まばたきする程の僅かな時間の筈が

長い時が無音の中に流れ続けたような気がする。






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