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銀狼
第8章 雨(アマ)の鎮魂歌

一度自覚すれば、後は早かった。

「…え?…熱い…ッッ」

ただ熱いだけではない。

少しずつ少しずつ、自らの鼓動が速く…大きくなっていくのを感じる。


「何したの……!! 」

「…私は何もしていないだろう。お前が口にした果実が原因だ、セレナ」

「…ッ…これ?」


セレナは持っていた果実の残骸に目を見開いた。

嗅ぐ者を惑わす魅惑的な香りが、まだ辺りに漂っている。


「セリュスの実は、口にした者に癒しを与え…その身体に力を宿す」


いわば薬


「…だが一口で十分だ」

「……ハァ…っ…」

「…つまり此の実は強い媚薬。──食べ過ぎればそれだけ…その者の意識を蝕む」


今さら言っても、遅いだろうが──。


銀狼は彼女の前に腰を下ろした。



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