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銀狼
第8章 雨(アマ)の鎮魂歌
セレナは彼の後を追って湖の畔に歩いた。
…すると
背後から一匹の狼が咆哮( ホウコウ )をあげた。
「──…ッ」
互いに頃合いを計ったように、それは数匹に増えて咆哮の声も大きさを増す。
尾を長く引くその声は威嚇的な吠え方ではない。
彼等は動かない仔狼を取り囲み、涙を溢す天を仰いで透き通った声を聖地に響き渡らせた。
──幼い頃から
森から聞こえる狼の遠吠えは、夜眠れなくなるほどの恐怖を引き起こしてきたものだ。
けれど今彼女が聞くこの遠吠えは、これ以上無いほどの悲しみを帯びた、…まるで鎮魂歌。
切ないレクイエムだった──。