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銀狼
第3章 銀狼


“ …っ…狼ですって…!? ”


確かに、男達はそう言った。

セレナはまだ振り返れない。

ただ彼等の耳を覆いたくなるような悲鳴に追い立てられながら、足の動くままに森深くへと走って行った。



狼……!!

最も恐れていたことが起こってしまった。

セレナの脳裏に浮かぶのは、幼い頃から父親に何度も何度も言われてきた言葉。


『 ラインハルトの森に近づいては行けないよ、セレナ。日が暮れた後など…もっての他だ 』


セレナの父親だけではない。街に住む人間なら誰でもが知っている事実だ。


ラインハルトの森──

そこには恐ろしい狼がいる。


『 もちろん我々銃士隊も狼討伐に尽くしているさ。だが奴等はいったい何処に隠れているのか…。地道に倒しても、一向に数が減らんのだ 』


軍の警備にも関わらず無くならない被害に、人々はこの森に近づかないという措置を取らざるを得なかったのだ。

何も知らず踏み込んだ者は──

二度と戻ってこないのだから。



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