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華のしずく~あなた色に染められて~
第3章 【華のしずく】~夏雷~
それほどまでの犠牲を出しながらも、信成の身の安全は知れず、珠々は毎日を悶々として暮らした。楓の持ってきた石榴の掛け軸を守り仏の代わりとして、床の間に掛け毎朝、夕に香を手向け伏し拝んだ。むろん、祈るのは信成の無事である。
信成が敗走してから数日が経過した。
珠々がいつものように石榴の掛け軸に向かって祈りを捧げていると、楓が色を失ってまろぶように走ってきた。普段は滅多と取り乱すことのない楓にしては極めて珍しい。