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不倫王の憂鬱
第1章 不倫王の最近の憂鬱

 朝、会社の同じフロアにいる愛人宅から地下鉄に乗り会社へ向かう。

もちろん一回り以上違う愛人の由佳は通勤恋愛を楽しんでいる。

 新宿3丁目駅から彼等は少しお互いの距離を置く。
誰に会っても疑われないというスタンスを保っているのだ。

半身後ろから由佳は彼に着いて歩くのだが、今まで彼等が社内の誰かに遭遇した事は無い。

 ただこの日に限って彼の上司の伊藤部長が彼等が一緒に歩いてきたのを喫煙所である8階非常階段の踊り場から見ていた。

彼が出勤を済ませ非常階段に一服しに行くと伊藤部長が

「お前、若林ん家から出勤してんじゃないよなぁ?」

と半ば有り得ないと思いながらの質問を彼にした。

「流石に有り得ないでしょう。若林は歯医者の彼氏がいますからねぇ。私なんかに見向きもしませんよ、あはは。」

と彼は由佳の前の彼を引き合いに出してその場を繕った。


実は二人は歯医者の彼の事を相談を持ち掛けられた所から始まった。

ひと月で由佳と歯医者の彼は別れた。捨てられた由佳を慰めながら近づき、彼は由佳の信頼を得て今に至る。

由佳という女は才媛でスタイルの良い女だが、少し冷たい印象を初対面で受ける。

アイスドールと彼は名付けて茶化す。 ただスタイルが人一倍いい為、寒い場所を苦手にしている。

 彼は正反対に肉厚な筋肉で身を纏っているせいか暑がりで10月いっぱいまではエアコンをつけたまま眠るのだ。

そのせいで昨晩二人は言い合いをしていた。

 どちらの我が儘が強いかで好き度が解るのだが由佳は我が儘を通し続けて彼を怒らせた。

彼の言い分は尤もで

「暑い人は脱いでも暑いんだ。寒いならお前が着込めよ。」

彼はそのまま狭いシングルベッドで生まれたままの姿で寝息をたてた。

機嫌直しに由佳は虚ろな彼にくちづけしたり男根を魅力的な唇で弄んだりしていたが彼は分からないふりをしながら強制的に眠った。

その翌朝だったので通勤恋愛にも今までのような熱は入らない。

彼は
”こいつ、どうやって教育してくか・・・”

と考えていた。
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