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第5章 『俺』の気持ち
琉が塚本からその身を離し、ドアを押さえる。

転がるように逃げ出した塚本だが、

「そんなにヤりたいんなら、いい女 紹介しましょうか?」

背中から掛けられた琉の言葉に立ち止まり、恐る恐る振り返った。


言われるがままに琉に携帯を差し出す塚本は、先程までの警戒心は微塵もなく、スケベ丸出しのニヤけた顔をしていた。

しばらく塚本の携帯を触った後、琉はすんなりとそれを返す。


「塚本さん目当ての女からバンバン連絡くると思いますよ。楽しんで下さいね」

琉の笑顔につられ、塚本も厭らしい笑顔を深める。

最後まで締まりの無い顔をしながら、塚本はオフィスを出て行った。



「定年退職させてもらったんだから、素直に隠居しとけってんだよ」

小さくなる塚本の背中を睨むように見送りながら、琉は呟く。


(塚本さんは1人じゃ何にも出来ねぇ野郎だから、今は放っておいてもいい)

でも───気になるのはもう1人…


(白取の野郎…何考えてやがる?)


近いうちに起こりそうな何か嫌な予感に、琉は見上げた空をキツく睨み付けた。



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