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コンプレックス
第9章 弟の元カノ
”白取さんが会社を辞めました。
本社の上層部にも呼ばれ、今までして来たことを問い詰められたそうです。
……荷物を届けに行った時の白取さんの様子が尋常ではなくて……
夏川、夏川…とうわ言のように呟いていて……”
畑山の震える声から、その時の白取の狂気な様子が思い浮かぶ。
「聞いて欲しい話がある」
『なんだよ?渚との惚気なら聞いてる暇ない』
飄々として、生き方上手で…
比べられては卑下されて妬んでいた。
でも、
「それも聞いて欲しいけど、そういうんじゃなくて……」
───弟を…その家族を……危険な目に遭わせたくない───…
翔の中で強い決意が生まれていく。
「白取さんの事」
『…………白取?』
キッパリとした翔の言葉に、琉の声色が変わり、翔の手を握る渚の手にも力が篭る。
「今夜行っていいか?」
一瞬の沈黙の後、
『愛里咲が昨日倒れたんだよ。今日も寝込んでるから無理』
心配混じりに揺れる琉の声。
「え⁉︎ そういう事は早く言えよ! 渚 連れて行く!」
『は?』
それだけ言えば、翔は琉の返事も聞かずに通話終了ボタンを押していた。
一方的に終わった通話の向こうで、
『兄貴はいつも言い逃げしやがる』
琉がどこか安堵した表情を浮かべ、口元を緩ませていたなんて、この先も翔が知ることはない。
本社の上層部にも呼ばれ、今までして来たことを問い詰められたそうです。
……荷物を届けに行った時の白取さんの様子が尋常ではなくて……
夏川、夏川…とうわ言のように呟いていて……”
畑山の震える声から、その時の白取の狂気な様子が思い浮かぶ。
「聞いて欲しい話がある」
『なんだよ?渚との惚気なら聞いてる暇ない』
飄々として、生き方上手で…
比べられては卑下されて妬んでいた。
でも、
「それも聞いて欲しいけど、そういうんじゃなくて……」
───弟を…その家族を……危険な目に遭わせたくない───…
翔の中で強い決意が生まれていく。
「白取さんの事」
『…………白取?』
キッパリとした翔の言葉に、琉の声色が変わり、翔の手を握る渚の手にも力が篭る。
「今夜行っていいか?」
一瞬の沈黙の後、
『愛里咲が昨日倒れたんだよ。今日も寝込んでるから無理』
心配混じりに揺れる琉の声。
「え⁉︎ そういう事は早く言えよ! 渚 連れて行く!」
『は?』
それだけ言えば、翔は琉の返事も聞かずに通話終了ボタンを押していた。
一方的に終わった通話の向こうで、
『兄貴はいつも言い逃げしやがる』
琉がどこか安堵した表情を浮かべ、口元を緩ませていたなんて、この先も翔が知ることはない。