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近くて甘い
第57章 紳士と獣
加奈子の頬を要はその繊細な手で触れた。




「……副社長…?」


「田部さんは…僕といても…気が休まらないだろう…」



「え……?」




それって…



キョトンとする加奈子に、呆れたように緩く笑った要は、親指で、加奈子の唇をなぞった。




「っ……」



少し触れられるだけで、敏感に反応してしまう加奈子の身体…




………気が休まらないって…一体…




ふっと自嘲ぎみに笑った要は、加奈子に優しい視線を向けた。




「……僕が、キスしようと思う度に、君の身体はこれでもかってくらい力が入ってる」



「っ…そっ、それはっ…」



「ぎゅっと強く目を瞑って、とても警戒してるのが分かるよ」




「…………」



「いいんだ…無理しなくていい。
身体の関係なんて、僕は二の次三の次だと思っているからね…」



そういって微笑んだ要は、加奈子から視線を外した。



やっと…



やっと…



副社長が触れてこなかった理由が分かった…





「まぁ…さすがに、そんな風に田部さんに迫られると思わなかったから、今歯止めがきかなかった…」



困ったように、額を掻いた要のことを加奈子はじっと見つめていた。



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