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第7章 麻由子～夫の浮気相手、その夫

気配が感じられ始めてから発覚まで、時間は長くはなかった。

不審な夫の言動、携帯電話の記録。

そして社員を名乗る匿名の男性からの直接の通報もあった。

「ご主人は1年ほど前から浮気なさってますよ」

「えっ？」

「しかも、相手は旦那持ちの人妻です」

穏やかで、清楚な主婦である麻由子にとって、それは衝撃だった。

結婚以来、夫を疑ったことは一度もない。

そもそもそのようなことが起こる可能性を抱いたこともない。

私の夫に限って、そんなことが・・・・・・・。

口数は少なく、至極勤勉、真面目な夫だ。

夜遊びすることもなければ、妙な友達づきあいだってない。

昇格も果たし、今は仕事そして妻である麻由子との生活だけを考えているはずだ。

それが他の女に手を出すなんて・・・・・。

麻由子は、目の前が真っ暗になる気分だった。

順調に運んできたはずの人生。

刺激は少なくとも、幸せな人生が、私にはほぼ手中にあったのだ。

それがまさか、こんな形で・・・・・・。

嘘だ。

嘘に違いない。

麻由子は強くそう思った。

或いは、こうだ。

夫はだまされているのだ。

男遊びに手慣れた悪い女にひっかかったのだ。

既婚者で別の男に手を出すような、ひどい女に。

かわいそうな主人・・・・・・・。

そのような女との経験がないばかりに、だまされてしまったのだ・・・・・。

夫への困惑が、いつしか相手の女への激しい怒りに転化していった。

穏やかな麻由子が、そのような感情を抱いたのは、生涯初めてだった。

麻由子は強く思った。

その女に直接クレームするのだ。

夫をだますのはもうやめてくれ、と。

麻由子の行動は、思わぬほどに早かった。

密かに興信所に依頼し、そして、麻由子は相手の名前、職業、住所をつきとめた。